◎地区の概要
1.位置・面積・地勢
葛西用水路土地改良区は、埼玉県東部の9つの市と2つの町にまたがる地域を管轄しています。この地域には、加須市、久喜市、幸手市、杉戸町、春日部市、松伏町、越谷市、吉川市、草加市、八潮市、三郷市が含まれます。受益面積(賦課面積)は令和6年度現在で約5,100ヘクタールに及びます。
この地域は埼玉平野の穀倉地帯に位置しており、地形は非常に平坦です。地形の勾配は1/4000~1/5000程度となっています。上流部から中流部にかけては水田を主体とした農地が広がり、下流部では都市化が進んでいる一方、各地に数百ヘクタール規模の農地が団地状に点在しています。
土壌は主に利根川や荒川が形成した沖積層からなっています。また、水利権上の用水掛面積には羽生市も含まれており、令和6年度の実績では約7,985ヘクタールです。
2.水利系統
(1)葛西用水系統
葛西用水路は、埼玉県行田市内にある利根川の利根大堰から取水し、埼玉用水路を経て羽生市本川俣地区で分水されます。
本線は、北側用水路、中郷用水路、南側用水路という3つの主要支線用水路に分かれ、一級河川である大落古利根川に注水します。その後、大落古利根川を流路として利用しながら、見沼代用水の支線(騎西領用水や中島用水)からの加用水を取り込み、流下していきます。
越谷市と松伏町の境にある古利根堰で水を堰き止め、松伏溜井に貯めた水は逆川を通じて取水され、瓦曽根溜井に到達します。この水は四ヶ村用水路、谷古田用水路、東京葛西用水路、八条用水路を経て東京都境まで流れています。
(2)金野井用水系統
金野井用水系統は、春日部市内の江戸川に設置された金野井揚水機場で取水され、金野井用水路に用水を供給しています。末端では、元用水、中用水、新用水の3つの支線用水路に分水されます。さらに、近年の利根中央事業による用水再編の結果、二郷半領用水の最上流部に接続する形態となっています。
(3)二郷半領用水系統
二郷半領用水系統は、大落古利根川の左岸にある松伏町内の二郷半領揚水機場から取水され、導水路を通じて二郷半領用水路と新田用水路に用水を供給しています。また、三郷市内の中川には二郷半領中川揚水機場が設置されており、ここから揚水された加用水が二郷半領用水路に供給されています。
3.地域の農業
この地域は低平地で、葛西用水をはじめとする豊富な農業用水に恵まれていることから、古くから水稲栽培が盛んで、埼玉県内でも有数の稲作地帯となっています。栽培されている品種では、現在「コシヒカリ」が最も多く、「あきたこまち」や埼玉県独自の品種である「彩のかがやき」「彩のきずな」も広く栽培されています。さらに、畑作では、大消費地に近い立地条件を活かし、こまつな、ネギ、いちご、えだまめなど多種多様な野菜が栽培されています。
◎利根中央事業と土地改良区合併
本土地改良区の位置する埼玉東部の農業用水利施設は、羽生領用悪水路、島中領用悪水路、葛西用水路、二郷半領用悪水路、江戸川右岸用水の5つの土地改良区により管理されています。
しかし、施設の老朽化、地盤沈下、河床低下、都市化による農地転用の増加などにより、適正な配水が困難となり、営農に支障を生じていたことから、国営利根中央事業(平成4年度~平成15年度)により、施設整備が行われ現在に至ってます。
利根中央事業の目的である用水の一元管理のため、上記5土地改良区の合併を推進してきましたが、歴史的経緯や地域事情の相違から、上流2土地改良区(羽生領用悪水路、島中領用悪水路)、下流3土地改良区(葛西用水路、二郷半領用悪水路、江戸川右岸用水)が合併し、現在では、合併後の2つの土地改良区が連合を組織して、基幹水利施設の管理を行っています。